インディペンデント通信

コロナ禍のがん相談を振り返って「がん患者を支えるためのプロジェクト通信」

名古屋市立大学大学院医学研究科 大野裕美

来る5月8日から、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染症法上の位置付けが、季節性インフルエンザ等と同類の5類に移行します。そこで、今回のコラムは、これまでのコロナ禍を振り返って、がん相談のこれからを考えてみます。私は、先月、全国のがん診療連携拠点病院を対象に、コロナ禍のがん相談の実態を把握するための質問紙調査を行いました。調査結果の解析は、いま進めているところですが、現在(2023年1月末現在)も、がんサロンや患者会を中止している病院が多いことが分かりました。一方で、あえて中止にしないでこれまでと同様に行ってきた病院もわずかながら存在していました。また、対面活動の代替として、オンラインでの患者会や学習会等を新たに取り組むようになった病院も多いことが分かりました。しかしながら、このオンラインについて興味深い現象が見られたのです。ニーズがあったから立ち上げたのに、ふたを開けたら参加者が少ない、集まらないという現象です。この背景には、オンライン環境・操作等のスキルに対する問題があるようです。

  おそらく、これから5類に移行しても、しばらくは現状のような感染対策が続くと思われます。私は、対面もオンラインも状況に応じて両者を活用するハイブリッド型が望ましいと思っており、いま、その仕組みを考えています。今回の調査もその一環でしたが、院内での患者会活動の再開はハードルが高いことがあらためて示されましたので、今後について再考する必要性がでてきました。

  さて、私事ですが、3月に2週間ほど中欧に滞在しておりました。人々の生活、大学病院、クリニック、ホスピス(緩和ケア病院)等もみてきましたが、コロナは過去のものという感じでした。マスクはしていませんので、スキンシップも制限がなく、何より語り合うことが大好きという感じで日常に活気がありました。病院も同様です。文化や思想の違いに驚きや羨ましさを感じた視察でしたが、我が国にとって必要ながん患者支援とは何か、逆照射的に考えさせられた体験でもありました。

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