「インディペンデント通信 2022年5月 第20号
この通信の読者は、少なからず「がん」に関係のある方々が多いのではないかと思われます。ご存じのように、
がんの治療も外来で行えることが増えてきて、治療と仕事の両立も可能になってきました。しかしながら、やはり
仕事との両立は難しいのではないのか、職場にどう伝えたらよいのか、配慮してもらえるか等、職場復帰の悩みは
尽きません。国も、就労支援に力を入れるようになり、いまは、自治体や医療機関でも、労務の専門職である社会
保険労務士による相談会を設けているところが増えています。このような取り組みは、がんの当事者や家族の方々
にとって朗報ですが、残念ながら有効的に機能しているとは言い難いのです。
なぜなら、そもそも相談というのは、単一明解に区分される内容が持ち込まれるのではなく、複合的かつ拡張
していくという特徴があるからです。就労相談においても、治療や症状の悩みから就労に関する悩みに拡張す
る、またはその逆で、就労に関する悩みから家族の問題や死生に関する悩みへと拡張する、というようなこと
は普通に見られます。そのため、相談対応をしている相談員やピアサポーター、さらには患者にかかわるそれ
ぞれの医療従事者等が、その問題を適切に判断してそれぞれの専門家につなぐことが求められます。でも、専
門職という責務が働くのか縦割り完結する傾向が強く、有機的な連携が進まないという組織的な課題を抱えて
いるところが多いのです。
私も、就労との両立に関する相談を受ける回数が増えてきたことを実感しています。その際に、必ず、ご自身
の気持ちを丁寧にお聞きすることから始めます。前述したように、単に仕事の話だけでなく、本音とたてまえ、
さらにはその人のアイデンティティや死生観に通じていくことも多いからです。
今後は、支援者側である医療・福祉、そして就労に関係する産業衛生の方々とのネットワークの拡張が望まれ
ると同時に、受け手である就労者側の患者教育も重要です。インディペンデントでも、来る7/9(土)に、がん
と就労に関するミニセミナーならびに、タナトロジーカフェを久しぶりに集会型で企画しています。皆様方と直
に本音で交流できる貴重な機会です。ご参加をお待ちしています。
がん患者さんの就労支援インディペンデントでは、大野先生と一緒にタナトロジーカフェを定期的に行っています。
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