インディペンデント通信 2022年9月 第21号
治療と仕事の両立に関して、様々な制度が活用できることはご存じでしょうか。わが国の疾病構造ならびに人口問題を
背景に、慢性的な病を抱える方々(がんも含みます)が治療と仕事を両立しながら働き続けられるように、
国は、両立支援制度を拡大させています。病院内だけでなく、ハローワークや保健所等でも相談を受け付けています。
一見すると、相談機関もたくさんあるように思えるのですが、実際には、いつでも知りたいことや相談ができるという
わけではありません。確かに、窓口はあるのですが、社会保険労務士等の担当者は指定日のみ、かつ予約制で
あるという場合が多く、また、書類関係は行政や会社の人事窓口、症状や治療については主治医や看護師等、
それぞれアクセスするところが分かれています。たらい回しにされたとは、体験者の弁です。
そうした制度を活用するには、自己申請によって開始されますので、そもそも知っておく必要があります。
情報は提供されているのだから自己責任だと言われればそれまでですが、我が国は皆保険制度以降、
お任せ医療にどっぷり浸かってきました。一般的に、自らのセルフケアへの意識や健康への責任が希薄であると
いう傾向があります。私は、がん患者支援にかかわる研究者として、「賢い患者になりましょう」をキャッチ
フレーズに患者教育(がん患者のためのセルフケアプログラム、ACP・人生会議のための死生観教育プログラム)を
提供していますが、患者になってからでは少々、大変です。辛い症状や治療中の副作用がある場合に、何が自分に
とって望ましいのか、必要なのかを冷静に考えることは難しいのです。
国や自治体も、申請主義に関する弊害を考慮して、専門家が困りごとや悩みごとを抱えている人たちを
ピックアップして支援していくようなアウトリーチの仕組みを示していますが、どちらもほどほどであることが
重要だと思います。お任せ的な環境だと、判断能力は低下し依存傾向が強くなりますし、自己責任的な環境だと、
弱肉強食の世界となります。神経質になりすぎるのも心配の種ですが、ほどほどに自分の身体や取り巻く
社会状況や医療制度に敏感になることも大切だと思います。そして、使いにくい制度や知らなかった制度は、
その不具合について改善点を求めていくことも大切です。体験者でなければ分からないことは多いのですから、
その声を発信していくことは後進のためにも重要なのです。
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